好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
頬に手を添えられた。心臓が跳ねる。
触れたのは、あの夜以来だ。
黎は微笑を浮かべている。
「大丈夫だ」
なにが? 私はもう、ただの人間ではいられないかもしれない。
……黎と、関わってはいけない人間かもしれないの。
――傍にいられないのは、真紅の方かもしれない。
いや、絶対に、自分の方だ。
「真紅……?」
銀色の瞳が覗き込んでくる。
今はどうしても、不安をあおられる色。
黎が、人間ではない証。――鬼である証拠のように。
ぶに、と頬を引っ張られた。