好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
どこかに、黎と離れるべき正統な理由はないだろうか。
真紅の気持ちを、完全に黎から切るような理由は。
「……歩きながら話すか。長くなるから」
黎の靴先が、真紅のいつもの帰り道の先へ向いた。
もう逢わないと言われたときは、ずっと手を繋いでいたのに。
今は、真紅が黎から距離を取っている。
黒藤の言葉を、聞いてしまったから。
「体面上、桜城の家では、俺が愛人の子で、架が正妻の子、ってことになってる」
「体面上?」