好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】


「弥生さんは一人で育てて行くつもりだったらしいが、誠さんは許嫁の解消に、一気に踏み出せなくなった。

そしたら美愛さんが、誠さんに弥生さんとの結婚を勧めた。

たぶん、美愛さんが正式に誠さんの妻となるには、長い時間がかかるってわかったから。

それを受けて、誠さんと弥生さんは結婚した。だから、俺と架は戸籍上だけは兄弟」


「………黎のお母さんが、美愛さん」


「美愛さんは今、桜城の家にいる。今は、あそこでしか美愛さんは生きていられないからな」


「どういう意味?」


「異国の吸血鬼である美愛さんは、日本の空気に馴染めなくてな。

俺も最初はそうだったんだけど。桜城は鬼人の家系だ。敷地内は少しの妖気も漂っている。

その中でなら、美愛さんは生きていられる。

小さい頃の俺も、美愛さん同様、桜城の敷地より外には出たことがなかった」


「………」
 

真紅は唇を噛んだ。


「そっか……。黎のお母さんは今、辛い状況にあるわけじゃないんだね?」

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