好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「……母上……?」
 

ふと、黒藤の声が揺れた。


「黒ちゃん? どうしたの?」
 

水鏡を見つめる黒藤は、だんだん目を見開いてゆく。


紅亜には水鏡は視えない。


真紅は、黒藤が何に驚いているのかと、もう一度水鏡を覗き込んだ。
 

そこに映るのはさっきまでと変わらず、母と同じ顔をした女性――え? 今……


「くろとさん……紅緒様が……」


瞼が、動いた?


「………」
 

黒藤は真紅には答えず、拳を握って水鏡を消した。


水滴は床に落ちることなく空中で霧散した。


「真紅、紅亜様、病院に行く」


< 395 / 447 >

この作品をシェア

pagetop