好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
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「……母上……?」
ふと、黒藤の声が揺れた。
「黒ちゃん? どうしたの?」
水鏡を見つめる黒藤は、だんだん目を見開いてゆく。
紅亜には水鏡は視えない。
真紅は、黒藤が何に驚いているのかと、もう一度水鏡を覗き込んだ。
そこに映るのはさっきまでと変わらず、母と同じ顔をした女性――え? 今……
「くろとさん……紅緒様が……」
瞼が、動いた?
「………」
黒藤は真紅には答えず、拳を握って水鏡を消した。
水滴は床に落ちることなく空中で霧散した。
「真紅、紅亜様、病院に行く」