好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】


「病院?」


「黒ちゃん? 紅緒がどうかしたの?」
 

黒藤は先に歩き出してしまう。


母娘は戸惑って顔を見合わせたが、すぐに追うことにした。


「今、水鏡の向こうで母上が目を覚まそうとしている」
 

玄関まで来ると、黒藤がいきなりそう言った。


「目を覚ますって……それは明日じゃないの?」
 

戸惑いを隠せない紅亜に、黒藤は肯いた。


「母上の算段では、そうでした。ですが、それを決断された当時の母上は、無涯を失い傷心でもあられた。

どこかに隙があったのかもしれない。……母上の予定とは、時間がずれたようです」


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