好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



背中を張り付けた壁に、自分の脈動が移ってしまったようだ。
 

今目にした、愛しい子。


「何でここにいんだ……」
 

ここは紛れもなく病院。しかもかなりの病床数を誇る大病院である。


「まさか……傷、治らなかったとか……」
 

いや、あの折の傷は完治させたし、今も調子が悪そうなところはなかった。


「にしても」
 

何で。
 

逢わないと決めた子に、逢ってしまうのだろう。
 

そこにいたのは間違いなく真紅だった。

< 74 / 447 >

この作品をシェア

pagetop