好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】
昨日、気紛れに見つけて本心から助けた子。
真紅に似た長い黒髪を見ただけで心臓が跳ねた。
まさか本人ではないだろうと思って、でも真紅だったら……そんなことを思い、書類に顔を伏せ気味に廊下の端を通り抜けた。
真紅は何やら売店の袋を下げて、憂い気な顔をしていた。
……もしかして自分を?
そんなことを思ってしまった。
あの憂いの理由が自分だったら?
もう逢えないものと思っているから?
(いや、だからそんなことを)
考えるな。