もう一度、名前を呼んで2
……───

『それでまあ結局、エリクは出国できないしエドはビビってる、ってことでわたし1人で来たのよ。ついでに仕事も少し入れられたしちょうど良かったわ』
『そうだったんだ……』

帰宅した時は夕暮れ前だったにもかかわらず、窓の外はもう真っ暗だ。長い時間話し込んでいた。

あたしの知らない間にみんな色んな苦労をしていた…。エドはもちろん、エリクも、ジュリアも。リンとティルだってきっと凄く大変で、あたしは迷惑をかけてしまったんだと思う。
「こんなにたくさん迷惑をかけたのに、帰ってもいいのかな……」
あたしがまず思うのは、それだ。
みんなにこんなに苦労をかけたのに、のこのこ帰っていいんだろうか。許してくれる?みんなに許してもらえないのなら、ここで苦しみ続けた方がましだ。

『……帰れない、なんて思ってるんじゃないでしょうね?』
ジュリアは日本語はそんなに分からないから、あたしの小さな呟きなんか聞こえてないかと思ったけれど察したらしい。暗い表情を見ればわかるのかもしれない。
『アイナ、気に病む必要はないわ。わたしたちはあなたに戻って来てほしい一心でこんなに頑張ったのよ。あなたが居なければエドだけじゃない、みんな活気がなくて暗いままなの。あなたはわたしたちに必要なのよ』
ぎゅっと手を握られて、ジュリアのまっすぐな視線に射抜かれた。
『ああほら、泣かないの。こっちへいらっしゃい』


ありがとう、ありがとうジュリア……
あたしのほしい言葉をこんなに真っ直ぐに言ってくれるなんて。

『……帰りたい。アメリカに帰りたいよ……エドに会いたい』
そうすればこんなに途方も無い寂しさを感じることもない。きっと満たされてあたしは幸せに生きていける。エドの側で。何があっても。

『帰りましょう、わたしと一緒に』
『うん…うん……!』
暖かく抱きしめてくれるジュリアの胸で声をあげて泣いた。
どこに居ても寂しくて、ぽっかりと空いた穴がゆっくりと塞がって行く気がする。ジュリアやエドはあたしの家族だった。優しくて暖かくて、安心する"帰る場所だ"って思う。

だからこそ。

『あたしね、こっちでも大切な人たちがいるの』

悠唏たちに、話をしなきゃならない。

< 90 / 90 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:56

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
巫慈/著

総文字数/97,379

恋愛(キケン・ダーク)278ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
私はきっと 何か大切なものを無くしている マスターはどうして私を 手放そうとするのですか? 蓮士と私の関係は何? “戻ったら” とは、どういう意味ですか? ――私が無くしたものは 何ですか―――? 華〜ハナ〜Ⅰ・Ⅱの続編です。 先にそちらを読んでください。 2012.06.03 熟考の末ジャンル変更。 2016.2.18 完結しました。
華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
巫慈/著

総文字数/148,174

恋愛(キケン・ダーク)417ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ただ闇を見つめる少女 ――…一切の光を拒絶し 人とは一線をおく…―― 「私はあなた達とは違う。 私に関わるべきじゃない…」 そんな彼女の前に現れた男 その雰囲気は何者をも包み込む 「知るかよ。俺はお前が 必要なんだよ。」 そして――… 二人の意外な繋がりとは?? もう一つの本 「もう一度、名前を呼んで。」 と少しつなげる予定です! 02/24 完結しました。 2012.06.03 熟考の末ジャンル変更。
恋を知らない君を【完結】
巫慈/著

総文字数/13,596

恋愛(純愛)11ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
遊び人社会人 × 恋を知らない女の子 *基本的に男目線で話が進みます* *ちょっとエロくて、でも片思いの 感情が突っ走ってる。そんな話。* 「特別じゃ、ないんだよねえ…誰も」 そんなこと言わないでよ。 俺のこと好きになってよ。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop