もう一度、名前を呼んで2
だが、エドは考え込んでいるようだった。本当に会いに行くのか。藍那がこちらへ来ない選択をしたことに、ほかの理由はないのか。“日本での生活が楽しい”という理由ではないのか。のこのこ帰れないなんでいうのは体のいい断りの文句だったのではないか……そんなことを一人で考えてばかりで,ついにエリクにこぼした。
『……俺はこっちに残る』
『は?日本に行かないの?』
『仕事もあるし……』
『それはそうだけど、俺が残るって話だったじゃないか!』
『だからお前が日本に行けばいいだろう』
『……なに考えてる?』
エリクはここ数日、エドが何かを考え込んでいることには気付いていた。仕事はさっさと終わらせて帰ってくるし、帰ってきても部屋に閉じこもって出てこない。もともと自分のことを話すタイプではないため放っていたが、きっと藍那のことで良くない方向に何か考えている。
『正直に言いなよ,エド』
『……アイナは,俺に会いたくないんじゃねえかと思う』
ああ、なんということを考えているんだろう。こんな風に落ち込むのはやっぱり藍那が理由なのだと実感し、それでもその考えは良くないと思う。
『あのまま帰ってこなかったから?』
『ああ』
『でもそれは理由があったでしょ?』
『だが、適当に理由をつけて断っただけって可能性もあるだろ』
『違うよ。アイナはそんな遠回しな断り方、エドにはしないよ』
『……』
『いつだって素直に、ちゃんと考えて答えをくれたじゃないか。今回のことだってそうでしょう』
『そうだろうか……』
エリクの説得に少しだけ揺らいだようだったが、結局エドは日本へ行かないことに決めた。
『ジュリア…エドのショックは想定以上だったのかもしれない』
『まさか行かないなんてね』
『代わりに俺が行くよ……エドのパスポート使えるかな』
『……その前にあんたたちって出国できるの?』
忘れがちだが、エドは西岸最大のマフィアの次期ボスであり、エリクはその影武者。エリクに至っては正式な戸籍もないためジュリアは危ぶんだが……
『無理そうだったら自家用ジェットで無断出国だね』
『……物騒な冗談はやめてちょうだい』
芸能活動をしているジュリアは彼らとの関係をひた隠しにしているが、今回も気を付けないとヤバそうだ……と決意を固くした。