クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「あっ……」

 結局、立ち上がれずにそのまま元の椅子に崩れ落ちる。

 足が……それ以上に心が痛くて涙が出そうになる。

 カサンドラの前で、弱いところなんて見せたくないのに。

 堪えられず泣きそうになったとき、それまで身動きしなかったリュシオンが、すっと跪き、私の足に手を伸ばした。

「リ、リュシオン?」

 リュシオンは、とても優しい手つきで私の足首に触れてくる。

 それから戸惑う私を見上げて来たのだけれど、その目はさっきまでとは違って、いつもの優しいものだった。

 綺麗な黒い瞳が、真っ直ぐに私を見つめている。

「動いたら駄目だと言ったでしょう?」

 優しい声音。

「ご、ごめんなさい」

 何がなんだか分からないまま、私は小さな声で答える。

 リュシオンは、私のことを怒っていた訳ではないの?

 そうじゃないのなら、どうしてあんな冷たい顔をしていたの?

「リュシオン、何をしているの?」

 私に構うことが許せないのか、カサンドラが苛立った声を出す。

 そんなカサンドラに見向きもせずに、リュシオンが私に向けて言う。

「グレーテ、大丈夫だから泣かないで下さい」
「で、でも……」
「私はどこにも行かない。これからもグレーテの側にいる」
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