クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「あなたはアンテス城で裁かれます……フレッド」

 リュシオンが一際大きな声で名前を呼ぶと、直ぐにフレッドと数名の騎士が扉を開き部屋の中に入って来た。

 きっと扉の直ぐ外側で待機していたのだろう。

 彼等は全てを分かっているように、カサンドラのもとへ真っ直ぐ向かうとその身を拘束しようとする。

 ベルツ家の令嬢を気遣っているのか乱暴ではないけれど、カサンドラが逃げる術はない。

 いくら喚いても許されることなく、侍女共々部屋の外に連れ出されていく。

 あまりに予想外の事が次々と起こる為、私は呆然としてしまい何もすることが出来ないでいた。

 ただひたすらリュシオンとカサンドラの様子を見つめるだけ。

 だからすっかり失念していた。いつもカサンドラの近くに控えていた護衛の存在を。


「お前のせいでっ!」

 主が連れ去られていくのをとめられなかった彼は、怒りと共に剣を抜き、リュシオンでもなく騎士でもなく、私に切りかかって来た。

 白い刃が頭上に掲げられるのを見て、私は目を瞑る事すら出来ない。

 このまま切られると思ったその時、黒い影が視界を塞ぎ、私を害する者を弾き飛ばした。

 あっと言う間の出来事の後、視界に入るのは、倒れたまま苦しそうに呻く男と、容赦なく剣を突きつけるリュシオンの姿。

 あの一瞬で甚大なダメージを受けたのか、護衛の男が立ち上がる気配はない。

 それなのに、リュシオンは恐い程の怒りを宿した目で男を見下ろし、今にもとどめをさしそうな気配だった。

「ま、待ってリュシオン!」

 これ以上はやり過ぎだと感じ、私は必死に声を上げる。

 恥ずかしい事に襲われたショックで腰が抜けてしまったようで、リュシオンのもとに駆けつけることは出来ないから。

 私の必死の呼びかけに気付いたのか、リュシオンがゆっくりと振り向いた。
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