クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
「リュシオン達の訓練はとても厳しいのね」
「アンテス辺境伯領は国境に位置している為、いつ戦いが始まっても不思議はないのです。騎士達はその事を自覚し有事に備え常に自分を鍛えています。このアンテスとベルハイム王国を守る為に」

 リュシオンの口調は優しいけれど、私を見つめる目は真剣だった。

 私は自分の行いが恥ずかしくなった。

 辺境伯家の娘で有りながら、危機感も無く、リュシオンに会いたいという浮ついた気持ちで行動し、結果真剣に訓練をする騎士達の邪魔をしたなんて。

「ごめなさい……私、考え無しだった」

 項垂れる私に、リュシオンが呼びかけて来た。

「グレーテ姫」

 リュシオンに呼ばれたら無視は出来ない。顔を上げるとリュシオンは困ったような表情をしていた。

「言い方を間違えました。私が苛立ったのはグレーテ姫にではなく、止める事なくあの場に通した騎士に対してです」
「……そういえば」

 リュシオンに言われて思い出したけれど、あの場所に行く前に若い騎士に呼び止められた。

『グレーテ様お待ちください。今リュシオン様を呼んできますので』

 彼はそう言いながら必死に追いかけて来たけれど、私は気にしないで進んでしまったのだ。

 忙しいリュシオンを呼び出すのは悪いと思ったから。でもそれは間違いで余計に迷惑をかけてしまった。

「門の所にいた騎士はちゃんと私を止めたのに、私が言う事を聞かないで進んでしまったの。私を強引に止める事は、彼の立場では無理だったんだと思うわ」
「辺境伯令嬢の安全を守るのもアンテスの騎士の努めです。不興を買う事を恐れ、職務を放棄した事は許されません」
「でも……」
「先ほどの騎士が、壁ではなくグレーテ姫にぶつかっていたらどうなっていたと思いますか? 」
「……怪我していると思うわ」

 どう考えても、あんな大きな男の人に激突されたら平気ではいられないだろう。
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