クールな公爵様のゆゆしき恋情 外伝 ~騎士団長の純愛婚~
 直ぐに席を立ってフレッドの所に行こうとする私を、サウル王子が引きとめた。

「グレーテ姫、お待ちください」
「……どうかしましたか?」

 浮かしかけていた腰を、元の椅子に戻して問う。
 まだ何か重要な情報が有るのだろうか。

「リュシオン殿はアンテス城に戻られたと聞きましたが、グレーテ姫の復路の護衛はどなたがされるのでしょうか?」

 伝言役の私が、無事に帰る事が出来るか心配してくれているのだろうか。そう考えながら答える。

「帰りは、リュシオンの部下の騎士達が護衛に付いてくれます。ですが私が馬車で戻るのでは時間がかかりますので、まずは早馬で一報を入れますのでご安心ください」

 私の言葉に、サウル王子は顔を曇らせた。

「それはまずいな」
「アンテス城への一報は信頼出来る騎士に任せます。秘密が漏れる心配は有りませんが」
「信頼出来る騎士ですか……」

 サウル王子は納得いかないような表情をしている。国での立場もあるから、慎重になっているようだ。

「サウル王子が出来るだけ秘密裏に事を運びたいという気持ちは理解しています。ですがバラークは、既にアンテスへの攻撃を始める動きを見せています。バラークに関する情報は、出来るだけ早くお父様達に知らせる必要があります。それに……」

「えっ! 攻撃って?」

 私の言葉を遮り、ヘルマンが驚愕したような声を出す。

 どうやらバラークとの緊張した状況を、何も知らなかったようだ。

 以前にも思ったけど、ヘルマンはベルツ家の次期当主とは思えない程、情報収集力が無い。

 領地から出なくても、国の情勢を知る方法なんでいくらでもあるはずなのに。
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