捨てられた町
その声に目を開けると、カエルがいた。


ツルリとしたプラスチックのカエルは額から汗を流し、息を切らしている。


その光景がおかしくて僕はほほ笑んだ。


もう笑い声も出てこない。


「やめろ、蛇女!!」


カエルがそう叫び、蛇の体にしがみ付いた。


「私の邪魔をするな!!」


洞窟内に響き渡るように聞こえて来たその声はマヤさんのものだとすぐにわかった。


鈴の音のようにとても美しい声が、低く唸るような声にかわっている。


カエルは蛇の体に噛みついた。


蛇の力が一瞬だけ緩まる。
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