Distance
「ごめんなさい、村越さん。お待たせしちゃって」
「ううん、全然。僕が悪いんだよ~、今日は一日中イタリアンが楽しみ過ぎてさ、早く来すぎちゃったから!」


ふくよかなお腹をゆさゆさ揺らして、村越さんはにっこり笑った。
なんかすごく、平和で微笑ましい。例えるなら、蜂蜜の壺を持ったサンタがご機嫌に微笑んでいるような平和さ。


「いらっしゃいませ、お席へご案内いたしますので少々お待ちください」


レストランは、値段が手頃なのに本格的なイタリアンが楽しめるとあってやっぱり人気で、店内は混み合っている。
忙しそうな店員さんを待ちながら、ほぼ満席のテーブル席をぐるりと見回していると。


「、あー」


隣で村越さんが、間延びした声を発した。


「どうしたの?村越さん」
「なほちゃん、悪いんだけどやっぱり今日、中華でもいい?」
「え、な、なんで…」
「いや、なんか気分的に?急に中華の気分になっちゃったんだ、僕」


言いながら、村越さんは既に踵を返し、私を待たずレストランのドアを開け、そそくさと出て行ってしまった。


「あ、あの、ちょっと…」


どうしたんだろ…?
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