Distance

た、助かった…。
いきなりなんか変な雰囲気になるんだもん。その後食べた杏仁豆腐は、全然味がしなかった。

帰り道の夜空は、どんよりと曇っていた。まだ梅雨が明けてないんだっけ。厚ぼったい雲がのんびりペースなもんで、月も、星も、まったく見えなかった。

歩きながら村越さんは、口を開こうとしない。
この態度は、4回目のデートにして初めてのことだ。これまでは淀みなく、継ぎ目なく、空気を読まず、いつどんなときも話し続ける村越さんのキャラクターは確立されつつあったのに。違った一面が見れた。


「…あの、村越さん……」


沈黙に耐えきれず、私は口を開いた。
隣を歩く村越さんは、それまでのやや険しい表情を崩し、ハッとしたように真一文字に結んでいた口を解いた。


「なんだい?」
「コズミックランドって知ってる?行ったことあります?」


私はバッグの中から、今日店長の奥さんに貰ったコズミックランドの割引チケットを取り出した。


「知ってる知ってる!楽しいよねー、キッズコーナーとかもあって、噴水と繋がってる小さな川で水遊びとかも出来て、夏なんかはそりゃもう混んでさ」
「村越さん、詳しいんですね」
「え、そうかな?」
「もしかして、生徒さんから聞いたりするの?」
「あ、うん。実はそうなんだ。これからの時期、夏休みとか特にね!お土産貰ったりとかさ」
< 17 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop