Distance
「へぇー、人気の先生なんだ」
「へへ、そんなことないよ~」


頭をぽりぽり掻きながら言った村越さんに、割引チケットを差し出す。


「良かったら、一緒に行きませんか?気まずい思いしないように、土日と夏休みを避けて」
「いいね、うん、それならいい!じゃあ、今度の金曜日はどうかな」


村越さんに笑顔が戻って、ホッとした。
例えるなら、修学旅行で二、三日会えなかったサンタを、帰宅して一番に抱き締めたときのような安堵感。

三日月荘の、古びた小豆色の屋根が見えてきたとき。


「あ、雨。」


地面に濃い、水玉模様が描かれる。
土が濡れたときの、埃っぽいような独特な匂いを含んだひんやりとした風が、鼻を掠める。


「降ってきたね」


私たちは自然と小走りで、三日月荘に向かった。


「うわー、ちょっと濡れちゃった」


部屋の前に着くと、村越さんはポロシャツに付着した雨水をさっさと手で払った。


「雨の中送って貰って、すみませんでした。村越さん、風邪引かないように気を付けてね」
「うん」
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