Distance
素直にこくりと頷いた村越さんは、見送るためにドアを開けずにいる私を、真正面から直立不動で見つめている。


「?」


ええっと、この奇妙な行間は一体………。

村越さんは、なにか喋りたそうな顔をしている。私はそれを待っている。
そんな間にも、雨は本降りになってくる。トタン屋根をばつばつ叩き付ける。


「け、結構降ってきたね」


と、沈黙を割った私。
すると村越さんは、いつもは糸みたいに細い目を、キッと見開いた。


「できたら、君んちで、あまや」
「__なにしてんの?」


遮られた村越さんは、口を半開きにして、夜の闇からぬっと現れた人物を見た。
寿士は、透明の傘を閉じた。


「あ。もしかして傘、持ってないんですか?」


傘の雨水をぶんぶん振って飛ばしながら、寿士は平坦な口調で言った。


「へ?え、あ……」
「帰りたいけど濡れちゃうなー的な?だったら、俺ので良かったら貸しますよ。つか、安物なんでこれ、別に返さなくてもいいし」


ああ、そっか…。傘か。
私ってば、なんて鈍いんだろう。


「そっか、ごめんなさい村越さん、私ってば気が利かなくて!私のを貸します!ピンクだけど良いですか?」
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