Distance
「だ、大丈夫大丈夫!それよりあんたこそ、空きっ腹にそんなに飲んで大丈夫!?」


大きめの声で言ったら、煩かったのか、寿士は片目を細めて顔を歪ませた。


「寿士さ、昔っから炭酸苦手だったよね。ほら、覚えてる?義仁先生たちとコズミックランドに行ったとき…」
「だな。レモンヨーグルトパンでもアテにすっか」


テーブルの上の紙袋から、パンをひとつ取り出した寿士は、ソファーにどかっと座って大口でかぶり付いた。


「どう?新作パンのお味は」


私もテーブルに近付いて、紙袋の中からひとつ戴いた。


「うーむ」


咀嚼しながら首を傾げた寿士は、「旨いのは旨いけど」飲み込んで、またビールを喉に流し込んだ。


「これが初恋の味かって聞かれたら、こんなもんなのかね、って感じかな」
「なにそれ。なにその恋愛マイスターみたいな感想」
「だってお前、初恋なんていつの話って感じじゃん。俺らにとっちゃ」


立ったまま、私も小さくかぶり付き、私はそんなことないよ、と思った。今だって鮮明に、思い出せる。

だってその相手が、目の前にいるから。
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