Distance
新作パンは、とっても美味しかった。
レモンヨーグルトのクリームは甘すぎず爽やかな風味で、生地は蒸してあってもちもちで、これはきっと人気の商品になる。

握り拳二つ分はあるそのパンを、既に食べ尽くした寿士は、二つ目に手を伸ばそうとして、止まった。


「ほんとにそんな味か、試してみる?」


横柄に、足を組んだ寿士は、その言葉の意味を飲み込めてない私を上目遣いに見た。


「は?」
「ファーストキスの味が、するかどうか」
「ど、どうやって…」


私が呟くと、寿士は片頬を釣り上げて笑った。まるで、愚問だとでも言うように。


「その方法は__」


ソファーから立ち上がった寿士は、大股で私の真ん前まで来た。


「俺としてみりゃいいだろ?ファーストキス。」


顔に角度をつけ、近付いてくる。次第に焦点が合わなくなって、私ははっとした。


「っバッカじゃないの!?」


両手で思いっきり、今出せる限りの力を込めて、私は寿士を押し返した。
ゴン、と鈍い音を立てて、持ってた缶ビールが床に落ちる。
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