Distance
でも…できっこないじゃんね。結婚を控えてる奴に。

それとも私と浮気したいの?
いや、バカにしてるだけか。いつものように。


「…ただいま、サンタ」


暗い部屋の中を、習慣で足場を探して歩き、真っ直ぐにベッドまで行くとサンタを抱き締めた。

サンタは、小学生の頃書道教室のクリスマス会に、寿士が持ってきたプレゼントだ。
ほんとは誰がなにを持ってきたか、誰のプレゼントが当たったか内緒にするってルールだったんだけど、寿士が赤と金のリボンがついた包み紙のプレゼントを持ってきたところを、私は見てしまった。

みんな円になって座って、プレゼントを回して、音楽が止まったときに持ってるものをゲットできる。
あのときは必死で、音!止まれー!って祈って。ゲットできたときは、運を使い果たしたんじゃないかって思えるくらい嬉しかった。

どうしていい加減なあんな男を、そんなに好きなのかと聞かれたら困る。
たぶん、細胞に染み付いて、根付いてる。ちょうどそう、私のエプロンに、私の体に、焼きたてパンの香ばしい匂いが染み付いているように。

だけどもう、不毛な恋心に終止符を打たなくては。
だから強行手段に出た。
好きな人を作った。

きっと上手くいくよね…。寿士なんか忘れるために、私は村越さんと上手くやってかなきゃならないんだ、って。
心の奥で、自分に言い聞かせるように、強く念じた。
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