Distance
だけど、誰かに追い掛けられたり、不審な電話があったりとか、そういう実害的なものはなかったから、なんとなく気味が悪いな…状態のまま、金曜日になった。

仕事を終えた私と村越さんは、コズミックランドのエントランスで待ち合わせをした。


「__なほちゃん、チケット売り場こっちだよー!」


笹の葉色の緑にライトアップされた大きな観覧車をバックに、村越さんが手を振っている。
宇宙がテーマのコズミックランドで、ライトアップとプロジェクションマッピングが人気の七夕イベントとあって、人出は多い。

それに今日は週末だし、なにより昨日まで厚ぼったい雨雲に支配されてた空に、今日は数日振りに午後から晴れ間が広がったから、気持ちまで晴れ晴れとして絶好のイベント日和だ。


「村越さん、こんばんは。待たせちゃった?」
「ううん、そんなに。なほちゃんが来るまで買わないでいたんだ。貰った割引チケット、使うでしょ?」
「あ、はい」


私はお財布の中から、店長の奥さんに譲って貰ったチケットを二枚取り出して、販売カウンターのお姉さんに渡した。

入園すると、アトラクションに乗る人の歓声や、人工の川の流れる音が聞こえた。ロケットの形をしたジェットコースターが、頭の上のレールをビュンビュン加速して通り過ぎる。

見上げると、園内の至るところに笹の葉が飾ってあった。短冊が配られてるみたいで、幼い子の字で願い事が書かれている。
星屑を散りばめたように、小さな白熱のライトが、園内で光っていた。


「わくわくするね!なほちゃん、人が多いから迷子にならないようにね!」


隣で村越さんが、にっこりと目を細めた。
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