Distance
「天の川仕様なんだね」


なるほど、と呟いた村越さんは、川の両側に立ち、今正に見つめ合っているカップルたちを穏やかな目で眺めた。

…なるほど、織姫を彦星の気分を味わえるって訳ね。会えない時間と距離を超えて、再会したときの喜びも一入、的な?


「ねえ、なほちゃん。僕が好きな言葉、覚えてる?」


嫌な予感が存分にして、私は肩をぎくりと上げた。


「ええっと…。 なんだったけ?」


はははー、と笑って誤魔化しながら、頭を掻いた私に向き合った村越さんは、真剣な顔をしていた。


「惚れて通えば千里も一里。もしも恋になにか障害があったとしても、大好きな人との間にならば苦にならない、ってことだよ」
「は、はあ…」
「なほちゃん。僕たちも、川の両側に立ってみない?」
「え、えー…」


嫌な予感が的中した。

今の私は…。村越さんと天の川の両縁に立って、恋しげに見つめ合えるような立場じゃない、と思った。
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