Distance
いつもの口癖の、“僕が悪かったかな?”は、出なかった。
本来こういうときに言うもんなんじゃないの?一番悪びれるとこだろうが。
と、私は心の中で悪態を吐く。
『惚れて通えば千里も一里。もしも恋になにか障害があったとしても、大好きな人との間にならば苦にならない、ってことだよ』
障害って。まさか自分が既婚者ってこと?その上、子供もいるなんて…。
道理で。キッズコーナーについて詳しいはずだわ。家族で来たことあるんだね。
『なほちゃん。今夜、僕と二人で過ごさない?朝まで』
結局、体だけの遊ぶ相手を探してた、ってことだよね?
最低。下衆。
いい人そう、穏やかで優しい。って、疑うこともなかったよ。
もう信じられない。なにも信用できない。
でも怒りきれない。私も…利用したから。
村越さんに抱き締められたとき、ふんわりしなかったじゃん。
分かってたじゃない、村越さんはサンタの、寿士の代わりにもならないって。
最低だ。
私も。
「__いやぁ、イベントでお忙しいのに本当にありがとうございました。ただ捻っただけなのに大袈裟ですよね、すみません。あ、すみませんついでに、こいつに注射でも一本打ってくれません?予防注射。不倫予ぼ……痛!」
医務室。
手首を手当てしてくれたコズミックランドのスタッフに絡んでた寿士の腹を、肘で思いっきり小突いてやった。