Distance
七夕イベントは佳境に入り、盛り上がりは最高潮。プロジェクションマッピングが写し出されている、宇宙ステーションとかいうドでかい建物の周囲は物凄い人だかりだった。
そこを避けるように、私たちは川の方を回って、エントランスに向かった。

さっきまで、晴れてたのに。
空には、薄い灰色の雲が広がり始めている。


「あ…」


不意に川底を覗き込むと、砂に混じって小銭が落ちてた。


「ねー、ここってそういうご利益あるの?」


てっきり、隣を歩いているとばかり思って声を掛けると、「あ?」寿士の声は思いの外遠くから聞こえた。
屈めていた腰をしゅ、っと伸ばし、直ちに辺りを見渡すと。


「なほ。こっち、こっち~」


川の向こう側から、寿士の呑気な声が聞こえた。


「…いつの間にそっちに?」
「え?ご利益がなんだって?」
「あ、ああ。ほら、下。川の中にお金落ちてるからさ、誰か願いを叶えたくて投げたんじゃないかって思って」
「うわー、ほんとだ」


私と同じように、川底を覗き込んだ寿士は渋い声で続けた。


「まさかこんなことして、願いが成就するとでも本気で思ってるのかね」
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