Distance
私は無言で、川っ縁を再び歩いた。

藁にもすがる、じゃないけれど、私も神様にお願いしたくなる気持ちが分かる。
あんなにセクシーな(ちょっと?いや、かなり?キツそうだけど)婚約者がいて、幸せを手に入れる寸前の寿士には分からないでしょうね…。

などと自虐的に思って、川を隔てた寿士の方を向いたとき。
ぽつ、ぽつと変則的な間延びしたリズムで、雨が降りだした。


「降ってきたなぁ」


寿士が辟易とした声で言った。間翳を差して、空を見上げる。
私も倣って見上げて見ても、星など見えない。織姫と彦星は、雲の向こうに隠れてしまったようだ。

こんなにたくさん雨曇がいたら、お互いにお互いが見えないだろう。一年に一度しか会えず、姿も拝めないなんて、なんて悲劇。


「早く帰るぞ、なほ」
「う、ん……」


でもね、私の方も悲劇だと思うんだ。
だって、だってこんなに近くにいるのに。

距離は一向に縮まらない。
想いは永遠に届かない。

惚れて通えば千里も一里って。
一里が千里だよ、私には。


「なほ、駆け足で行くぞ」


向こうで寿士がダッシュしようとしてるのが見えて、私も走り出そうとしたとき。


「っきゃあ!」
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