Distance
「で、でも!おばあちゃんたちがこないだ話してたの聞いたんです、私…」
「それ、結婚するのほんとに寿士って言った?昭島さんとこの息子さんがー、とか言ったんじゃないの?」
「えっ!?えーっと…どうだったかな?」


とか言いつつも、内心かなりギクっとして、私は肩を竦めた。図星だったからだ。
義仁先生はすぐに状況が飲み込めたようで、呆れたように溜め息を吐いた。


「まーたすぐに寿士と結びつけちゃって。そういう勘違いして暴走するとこ、昔から全然変わってないね。」


ウインクみたいに義仁先生は意味ありげに片目を細めた。


「うっ……忘れてください」


どうかあのコズミックランドの赤いベンチでの件はお許しください…。と、心の中で強く念じていると、「うわー」と言って義仁先生が私のスマホを覗き込んだ。
スリープ状態の壁紙は、サンタの写真。
いい歳してぬいぐるみが待受かよ、とか思われてるんだろうなぁ、と恥ずかしくなったとき。


「このクマのぬいぐるみ、クリスマス会のプレゼントだよね」


義仁先生は全然引く素振りもなく、懐かしそうに目を細めた。


「あ、はい…」
「これ、俺が寿士に頼んで持って来て貰ったんだよ。家に忘れてさ」
「えっ、そうだったんですか!?私ってば、てっきり…」
「寿士が用意したのだと思ったでしょう?」


そこで義仁先生は、すべてお見通しとでも言うように、にやりと口元を緩めて笑った。
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