Distance
早めに切り上げようとしたんだけど、先延ばしにしたらまた予定を合わせたり面倒だからって誰かが言って、ゴミ拾いは雨の中決行されたらしい。
おばあちゃんは早々にお風呂を沸かしていた。

それから掃除とか、夕飯の準備を手伝ってたらすっかり夕方になった。久々に帰って来たからって、こき使われ過ぎた。

チェストの上の鍵をしっかり持って、私は実家を後にした。
おばあちゃんに借りた日傘みたいな真っ黒な傘を差して、おばあちゃんが作った夕飯のおかずが入ったタッパーを風呂敷に包んで片手に持って、三日月荘までとぼとぼ歩いた。

三日月荘の、古いトタン屋根が見えてきた。「あ…」
私の部屋の前に、透明の傘を差す人物の姿が見えて、身構える。距離を縮めてゆくと、ずんぐりむっくりとしたゆるキャラっぽいシルエットで、村越さんだってことが分かった。


「なほちゃん…」


帰宅した私に気付いた村越さんは気まずそうに目線を下げ、おどおどしながら続けた。


「良かった。部屋にいないみたいだから、今帰ろうかと思ったところだったんだ。妻が外出してるうちに、どうしても君に会って話したくて」
「…私は、話すことなんてありませ」
「ごめん!本当に、こんなことになってしまって申し訳ない!」


私の言葉など最後まで聞かずに、村越さんは大振りで頭を下げた。
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