Distance
穏やかに細められた寿士の瞳が、やたらきらきら輝いていて、七夕の魔法にでもかかったかのように、目が離せない。


「俺の短冊、先に見せるわ」


よっと手を伸ばし、テーブルに置かれた短冊を取って、寿士は私に表を向けて見せた。

……あれ?
おかしいな。私、目が悪くなっちゃったのかな。それとも字が読めなくなっちゃった?

だって、短冊に書かれた4文字が。
寿士のきらめく瞳がまばゆくて目が眩んでも、涙で視界がゆらゆら潤んでも、どう見ても。

“好きです”

に、見えるんですけど……。


「え、えと。こ、れは?」
「告白。俺、なほのこと好きだから。ずっと」


耳を疑った。
だって、さっき。“ごめん”って…。あれは私の気持ちに応えられないって意味ではないの?

それに。


「でも、あの職場の女の人と、付き合ってるんじゃ…」
「まあ、一回だけね。一回付き合ったらしつこくて」
「さ、最っ低ー!」
「しゃーねーだろ。俺はずっと、一番好きな女とは結ばれないと見限ってたんだから」
「…っ」
「なほが手に入んないんなら、どんな女も意味なかったよ」


苦しそうに、絞り出すようにそう言って、寿士は困惑する私の顔を真っ直ぐに見つめた。


「ずっと想ってる奴がいるから、本気にはなれないって言ってあったんだけど。諦めるから最後に一回だけデートしてって言われて、正直超面倒くさかったけど、それがちょうどあの、七夕イベントだったから。なほの様子も気になったし」



すーーーごい、遠回り。
こんなに近くにいたのにさ。

幾つも誤解を重ねて、いろんなことの真相が紐解かれる。
雨にけぶっていた空気に、お日さまの温もりを宿した新しい風が吹き込んで、ぱっと世界が白んでくるように。
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