Distance
「サンター…」


顔を埋める。
圧死させそうなくらい。


「…あいつ、出て行くのかな。こんなボロアパートで、新婚生活なんて嫌よね、きっと」


寿士は秋に結婚するらしい。
ちょうど一ヶ月くらい前、家賃を渡しに実家に行ったとき、おばあちゃんとお母さんが話してるのを小耳に挟んでしまった。


『あ?職場の女』


別に、隠さなくてもいいのに。

私に気を遣ってんのかな?まともに異性と付き合ったこともない可哀想な幼馴染みを差し置いて幸せになるから、忍びないなって。

むしろちゃんと、婚約者です、ってはっきり紹介してくれたらいいのに。そしたら、この気持ちに上手く、区切りが付けられるのにな…。

カーテンを閉めようとして、ベッドの脇にある窓から空を見上げた。


「もうすぐ七夕、か…」


惚れて通えば千里も一里。
織姫と彦星はどうなんだろ。天の川を隔てても、一年に一度しか会えなくても。
お互いに好きって気持ちがあれば乗り越えられる。けど。

気持ちが一方通行なら、どんなに近くにいても意味がないよね。

何度問い掛けてもサンタはなにも言わないけど、きらきらと降ってきそうなくらい瞬く無数の星は、こんな冴えない私を嘲笑ってるようだった。
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