あの夏の続きを、今
メッセージが終わったら、パートで集まって過ごす時間。
トランペットパートの3人の後輩たちは、松本先輩のところにプレゼントを持っていく。
アカリ先輩と事前に打ち合わせしていたセリフを、「せーの」の合図で3人一斉に言う。
「「「松本先輩!今までありがとうございました!!!」」」
そして、プレゼントを松本先輩に手渡す。
「みんな、ありがとう!早速開けてみてもいいかな?」
「もちろん良いですよ!」
そして松本先輩は、受け取った3つの包みを順番に開けていく。────そして、どの包みからも、犬のモチーフのグッズが出てきた。
ちなみに私があげたのは、布のカバーがついた手帳で、カバーの隅には小さく犬の絵が刺繍してある。
雑貨屋でこれを見つけたとき、いくつか色違いがあったのでどれにするか迷ったが、松本先輩にはなんとなく青系の色が似合いそうだな、と思い、水色のを選んだ。
「わーーーー!!良い!良い!めっちゃ良い!嬉しい!!!みんな、ありがとう!」
喜んでいる松本先輩を見て、私も嬉しくなる。
「実は、僕からもみんなにプレゼントを用意してるんだ」
そう言うと松本先輩は、ナップサックからプレゼントの包みを3つ取り出す。
「はい、これが前田さんので、これは広野さんの、これが山内さんのだね」
先輩からのプレゼントを受け取った3人は、早速その包みを開く。
「わぁーーー!」
「めっちゃ良いーー!」
「可愛いーーー!」
プレゼントの中身は、それぞれの好きなキャラクターの、可愛らしいノートとシャーペンのセットだった。
「先輩、まさかこれ、全部自分で選んで買ったんですか?」と聞いてみる。
「いやいやいや、とんでもない、他のパートの女子と一緒に選びに行ったんだよ。さすがにこんなに可愛い物を3人分も、一人で買いに行く勇気はないよー」
そう言いながら笑う松本先輩の姿を見て、松本先輩らしいな、と思った。
そんな松本先輩が引退してしまうなんて、寂し過ぎる。
この最後の時間を、大切にしないと。