あの夏の続きを、今


それから私たちは、お菓子を食べたり写真を撮ったりしながら、先輩との最後の時間を楽しんだ。


「ねぇ、カリンちゃん、志帆ちゃん、一緒に写真撮ろうよ〜!」


お菓子を食べている私とカリンに、唐突にそう話しかけてきたのは、他のパートの3年生の先輩たちだ。

「えっ、わ、私が、ですか!?」

「良いですよ〜!カリン、入りたいです〜!」

「じゃあいくよ〜!志帆ちゃんもほら、入って入って!はい、チーズ!」


先輩が手に持っているスマホから、パシャリ、とシャッター音が鳴る。


「うん!いい感じ!ありがとう!」
「「ありがとうございまーす!」」


先輩にお礼を言ってから、私とカリンはさっきいた場所に戻っていく。


────その時、不意に、窓辺に並んで立つ松本先輩とアカリ先輩の後ろ姿が目に止まった。


あの二人が一緒に話しているなんて、珍しい。


何故だか分からないが、滅多に二人だけで話すことのない先輩たちが一体どんな会話をしているのか、少しだけ気になって、私はほんの少しだけ窓辺に近付いてみる。


優しく包み込むような夕焼け色の光に、二人の横顔が照らし出されている。


それを見ていると、何故だかすこしモヤモヤした気持ちになる。


私は思わず聞き耳を立てた。




「なんだか、これからすごく不安なんです。パートの先輩が一人だけで、ちゃんと、二人の面倒を見れるのかなって……特に、志帆ちゃんとはまだ全然……」


アカリ先輩がそう言うと、松本先輩はいつものあの優しい笑顔で答える。


「きっと大丈夫だよ。前田さんは持ち前の明るさと行動力があるんだから、僕よりも全然、良い先輩になれるって」


「でも……松本先輩には、…………がいたじゃないですか。

…………から、短い時間とはいえ、代替わりして新しい役割が始まったばかりの頃に、……………っていうのはすごく大きいと思うんですよ。

でも、うちには、それもないから」


アカリ先輩の声にいつものような明るさと勢いはまるでなく、私は話の一部しか聞き取れなかった。


こんなに不安げにしているアカリ先輩は、今までに見たことがない。


そもそも、アカリ先輩が不安を抱えていそうなイメージというものがない。
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