あの夏の続きを、今
向かった先はA組の教室だ。
教室を覗き込むと、丁度朝練から帰ってきたのか、汗をうっすら浮かべたハルトがいた。
「ハルト!あのね、ちょっと来て」
私はハルトを廊下に呼び出す。
「急に来て、どうしたんだ、志帆」
「あのね……」
私は張り裂けそうな胸を押さえながら話す。
「私、噂を聞いたの。……ハルトに、彼女が……できたって……それってさ、本当なの?」
ハルトは驚いた顔をしたまま固まってしまったが、やがてゆっくりと口を開いた。
「うん……彼女がいるのは、本当だよ」
それを聞いた瞬間、全身から力が抜けていった。
立っているのも辛くなって、私は何も言わず、B組の教室に戻ろうとする。
だが、後ろから「ごめん、ちょっと待って!」とハルトに呼び止められる。
涙が溢れ出しそうになるのを必死に堪えながら、「どうしたの?」と振り向く。
「あのな、こんなことを言うのもあれなんだけど……」
「何?どうしたの?」
「本当は、相手から、付き合ってることは秘密にしたいって言われてるんだ。だから、志帆にも黙っておこうと思ったんだけど」
「……」
「やっぱり、嘘はつけなくて…………でも、これ以上のことは、言えないから、それでいいかな」
「うん……」
「それと、これからあまり志帆やレナと一緒にいられることは少なくなるかもしれないけど、許して欲しい」
「わかった……」
私はうまく力の入らない足をどうにか動かし、ハルトに背を向けてB組の教室へと戻る。
────どうして………!?
────どうして…………………!?
告白も、してないのに………
何も伝えないまま、失恋してしまうなんて…………
ねえ、嘘だって、言ってよ…………!!