あの夏の続きを、今


楽器を積み終えた後、部員たちはバスに乗り、会場のK市民会館へと向かう。


バスに乗る時、私はいつもカリンの隣に座るのだが、今回もいつものように、カリンの隣の窓側の席に座った。


だが、移動中ずっと、カリンは私に話しかけてくることはなかった。


まるで、少しでも触れてしまうと爆発してしまう何かを前にしているかのように。


────これも仕方ないことなんだけど。


でも、これも全て今日で終わりなんだから。


先輩が引退してしまえば、もう何もかも終わりなんだから。


私はため息をつきながら、イヤホンを両耳にはめ、窓にもたれかかって外の景色を眺めながら「せんばやま変奏曲」を聴いた。


────もう、私もこれ以上は何も言わないでおこう。


どうせ、何か言ったところで、カリンが次のパートリーダーということは、もう決まってしまっているんだから。


私は遠くに見える積乱雲をぼんやりと眺めながら、何回も繰り返し曲を聴き続けた。
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