あの夏の続きを、今
部活が終わると、既に辺りはだいぶ暗くなっていた。
私は去年と同じようにリサと一緒に帰り、帰る方向が分かれる交差点の手前の歩道で止まって、しばらく2人で話す。
「そういえば、松本先輩にはいつ告白する予定なの?」とリサが聞いてくる。
「んー、まだ決めかねてるんだよねー、もし浜百合高校に行くなら、コンクール終わった後にするかもだけど、東神高校行くんだったら高校生になってからかな」と、私は横断歩道を次々に通り過ぎていく中学生たちを眺めながら答える。
「コンクールって確か8月中旬だったっけ」
「いや、今年は今までとは違ってA部門に出るから、いつ終わるか分からないんだよね」
「というと?」
「今まで出てたB部門は県大会1回で終わりなんだけど、A部門は地区大会、県大会、中国大会、全国大会、って勝ち進んでいくの。
地区大会が7月下旬、県大会が8月中旬、中国大会が8月下旬、そして全国大会が10月…
だから、もし地区大会で落ちたらすぐ終わりだし、逆にもし全国大会まで進めたら、10月まで続くんだよね。
まあ、私たちがいきなり全国出場なんてまずないと思うけど」
「なるほどねー…まあ、いずれにせよ、運命の日は着実に近づいてきてるよね。私たちももう3年生なんだし。3年生よ?早くない?」
「運命の日って……すごい表現だね……でも、確かに、もうすぐそこまで来てるって感じはするね…」
「3年生」「最後のコンクール」「高校生」というものは、想像も付かないほど遥か遠く、手の届かない所にある幻のように感じていた。
それはいつ訪れるかどうか分からない、実現するかも分からないような、果てしなく遠い未来だと思っていた。
けれど、今、その時は確実に、私の目の前へと迫って来ている────確かな実体を持って。
追い求め続けてきた恋をこの手で掴むことができるのか、それとも砕け散って永遠に元に戻らなくなるのか。あるいは、再び同じ場所で少しの間「先輩後輩」として過ごすことになるのか────それが分かる日も、もうすぐそこまで来ている。