あの夏の続きを、今
それから私とリサはいつものように、長いこと歩道の端に留まって話をしていた。
もう、辺りはすっかり暗くなり、横断歩道を渡る中学生もほとんどいなくなった。
時々、一人二人と高校生らしき人が自転車に乗って通り過ぎていく。
────その時。
「あっ」
「何?どうしたの、志帆?……あ、もしかして、松本先輩?」
「うん、さっきそこの横断歩道を通り過ぎていった!」
「え、あれ松本先輩だったの!?じゃあ、志帆、行きなよ!早く追いかけて!頑張って!じゃあね、志帆!また明日!」
「えっ、あ、うん、リサ、また明日ね!」
私よりも早く、止めていた自転車を漕ぎ出して交差点を曲がっていくリサを横目に、私も自転車にまたがって進み出す。
横断歩道を渡ると、歩道の遠くの方にぽつんと、自転車に乗った松本先輩の背中が見えた。
追いつかないと────
私は風を切って全速力で自転車を漕ぐ。
信号よ、赤になれ、赤になれ────
だが、今回は運悪く、信号は青のままだ。
全力で漕いでも漕いでも、松本先輩には追いつけそうにない。
松本先輩が交差点を曲がった。住宅街へ続く道だ。
松本先輩の姿が見えなくなっても諦めることなく、私は自転車を漕ぎ続ける。
交差点を曲がると、そこから先は長い上り坂だ。
私の体力では自転車に乗ったままこの坂を上りきることはできないから、普段は自転車から降りて、押して歩くんだけど────
今日はそういう訳にはいかない。
松本先輩は自転車から降りることなく、坂道を上っていく。
お願いです、止まってください、止まってください────
既に私の息は限界まで上がり、足には疲れが溜まってきている。それでも、私は諦めずに一生懸命自転車を漕ぎ続ける。
その時────
松本先輩が坂道の中腹あたりまで来た所で、自転車から降り、歩き始めた。
────今だっ!
私は全身に残った力を振り絞って、自転車を漕ぎ、松本先輩の背中目がけて坂道を上っていく────
あと少し、あと少し────