あの夏の続きを、今
そしてやって来た放課後。
学校指定の通学鞄とナップサックの他に、もう一つ「大事な物」を持って、音楽室へと向かう。
いよいよ私も、今日から「あれ」を使える日。
早く「それ」を出したくて、全力で階段を駆け上がる。
合奏隊形の自分の位置に来てから、そのケースを開ける。
その中に入っているのは────
銀色に輝く、新品のトランペット。
そう、私は、ついに、自分の楽器を手に入れたのだ。
それを目にしたパートメンバー達が、早速集まってくる。
「あっ!志帆もマイ楽器になってる!おめでとうーーー!」とカリン。
「おー、広野さんもマイ楽器デビューだ!羨ましいー!」と松本先輩。
「いいなぁ二人とも、うちも自分の楽器欲しかったな~」とアカリ先輩。
大切な、自分のトランペットをケースから出し、そっと椅子の上に置く。
今日から、よろしく。いい音を奏でてね────
そう、心の中で語りかけながら。