必然的な運命
「一つだけ。僕にも不安があるんだけど、聞いてくれるかい?」

少し落ち着きを戻した俺に先程より、か細い声が響いた。

「娘の事、なんだけどね。独りぼっちになっちゃうからね… 」

自分の病気の時には見せもしなかった、なんとも煮え切らない表情を浮かべた。

「だからさ、お願いがあるんだけど… もし僕に万が一の時があったら娘を助けて欲しいんだ。あの子 頼ることを知らないから」

誰に似たんだろうね?と軽く笑いながら発した。

親と子 2人きりで支え合い、山崎さんに心配かけまいと明るく天真爛漫な麻美の事は研究員の誰もが知っていた。
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