御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
「淳也、私、あなたがいないと……」

「急ぎの電話があるんだ」


淳也さんは桑田さんの言葉を遮り、離れていったようだ。
足音が遠ざかった。

私はコーヒーフィルターを手にしたまま、呆然と立ち尽くしていた。


淳也さんを信じたい。
しかし、私が彼女とのキスを見てショックを受けたと知っているはずの彼が、桑田さんの申し出を拒否しなかったという衝撃で、動くことすらできない。


「どうして……」


淳也さんは私だけを愛すると言ってくれたのに。
私はそれからしばらく、フロアに戻ることができなかった。


その日、もやもやした気持ちを抱えたまま会社を出ると、すぐに淳也さんから電話がかかってきた。


「もしもし」


少し緊張しながら応対する。


『英莉、悪い。急に接待が入って、夕飯いらなくなった。遅くなるかもしれないから、先に寝ててもいいぞ』


接待って……。
桑田さんと食事でしょ?


「わかり、ました」

『それじゃ』
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