御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
でも、無理だ。
結局、彼にとって私はただの家政婦だったのだから。

慶太郎さんが、奥さんだろうか、エレベーターホールに向かっていたすみれさんを捕まえると、彼女は口を尖らせながらも部屋に戻ってくる。
本気で怒っているわけではないのだろう。


「あっ、すみません」


すると、慶太郎さんと目が合ってしまい、私は慌てて会釈して歩き出した。


「待って。一木の、彼女さんですよね」


淳也さんを知ってるの?
隣だからかと思ったけれど、それなら『さん』があってもいいような。


「いえ、家政婦です。失礼します」

「ちょっと待って! どうして泣いてるの?」


そうだった。
泣いていたことなんてすっかり忘れてた。


「なんでもありません。失礼します」

「だから待ってよ、一木呼ぼう。ケンカした?」


彼がそんなふうに言うのがおかしかった。
だってケンカをしているのはそっちでしょ?


「ケンカなんて、できません」


そう言った瞬間、また涙がこぼれてしまい、慌てて手で拭う。
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