御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
気がつけば、キャリーバッグに荷物を詰め始めていた。
そして、震える手で退職届をしたためる。


なにも知らない業界に飛び込んで、最初は不安だらけだった。
でも、必死になって勉強して、少しずつ仕事が楽しくなってきていたのに。

書きあがった退職届と、【今までお世話になりました】という短い手紙をテーブルに残し、部屋を出た。

鍵をポストに入れた瞬間、じわじわと涙が溢れてくる。
もう、ここに戻ってくることはない。


私はドアの前で深々と頭を下げてから、一歩を踏み出した。
すると突然隣の部屋の玄関も開き、私と同じ歳くらいのかわいらしい女の人が飛び出してくる。


「すみれ、悪かったよ。そんなに怒るな」

「慶太郎(けいたろう)さんが悪いんだから!」

「だから謝ってるだろ」


どうやらケンカをしているらしい。

でも私にはそれがうらやましかった。
淳也さんとそんなふうに気持ちをぶつけあえたら……。
< 248 / 344 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop