放課後4時10分、校舎5階で君を待つ。
「あ・・・!」
莉奈がどうしたの、という顔で私を見る。
私は人差し指を立てて上、上、と莉奈に合図を送った。
「この流れてる歌、凄く好きなんだ」
スピーカーから降ってくるメロディーに莉奈も耳を傾け、暫し聞いていた。
賑やかなクラスメイトの声に混じって放送から聞こえてくる音楽に私も耳を澄ます。
「美空この歌手好きだもんね」
莉奈の言葉に頷くと、ちょうどその時。
「莉奈ー」
窓からひょこっと顔を覗かせる一人の人物。
彼もまた、学年で知らない人はいないほどの有名人であり、莉奈の彼氏でもある平松(ヒラマツ)翔也。
「数Ⅱの教科書貸して!」
「またぁ?いい加減持って来てよね」
そう呆れながら言うと莉奈は席を立ち上がり、ロッカーに教科書を取りに向かった。
そんな様子を頬杖をつきながら、ぼんやりと眺めていた。