傘も方便【短編】
「ありがとうございました。後、なんかすいません。変なことに巻き込んでしまって。」
それぞれのオフィスがあるビルに着くと深々と頭を下げた。
きっかけはどうであれ、迷惑をかけてしまったし。
まともに話したこともない人に。
「変なことって……ああ、何となくだけどカフェに誰かいた?」
「えっと……はい………でも終わった事です。」
「終わった事?」
「はい。終わってます。ただちゃんと意思表示出来ていなかったので。」
「なるほど。それで突然の密着という訳か。」
やっぱりバレてたか。そりゃそうだよね。かなりの挙動不審だもんね。
「助かりました。ありがとうございます。それに傘も……濡れずに済みました。では。」
これ以上話すこともないし、一連の出来事を思い返すと何となく居心地が悪い。
足早にそこから立ち去ろうとしたら、
「いいんじゃない。嘘も方便っていうし。」
呼び止められた。
「えっ、ああ、まぁ、そう言って頂けると。」
もうフォローとかいいよ。恥ずかしいから触れないでほしいくらいなのに。
再び立ち去ろうとしたら、
「それにーーー、これ。」
と、彼が渡してきたものは
「えっ、これ?傘……私に?」
ビニール傘をこちらに差し出してくる。
どういうこと?
私が戸惑いを隠せないでいると
「だってこれ最初から君の。だから返す。俺のはさっきの蕎麦屋に置いてきた。」
はっ?
なんて?
意味が分からないんですけど?
だってさっきあのお蕎麦屋さんで自分の傘だって言うから私……
どういうこと?
それぞれのオフィスがあるビルに着くと深々と頭を下げた。
きっかけはどうであれ、迷惑をかけてしまったし。
まともに話したこともない人に。
「変なことって……ああ、何となくだけどカフェに誰かいた?」
「えっと……はい………でも終わった事です。」
「終わった事?」
「はい。終わってます。ただちゃんと意思表示出来ていなかったので。」
「なるほど。それで突然の密着という訳か。」
やっぱりバレてたか。そりゃそうだよね。かなりの挙動不審だもんね。
「助かりました。ありがとうございます。それに傘も……濡れずに済みました。では。」
これ以上話すこともないし、一連の出来事を思い返すと何となく居心地が悪い。
足早にそこから立ち去ろうとしたら、
「いいんじゃない。嘘も方便っていうし。」
呼び止められた。
「えっ、ああ、まぁ、そう言って頂けると。」
もうフォローとかいいよ。恥ずかしいから触れないでほしいくらいなのに。
再び立ち去ろうとしたら、
「それにーーー、これ。」
と、彼が渡してきたものは
「えっ、これ?傘……私に?」
ビニール傘をこちらに差し出してくる。
どういうこと?
私が戸惑いを隠せないでいると
「だってこれ最初から君の。だから返す。俺のはさっきの蕎麦屋に置いてきた。」
はっ?
なんて?
意味が分からないんですけど?
だってさっきあのお蕎麦屋さんで自分の傘だって言うから私……
どういうこと?