傘も方便【短編】
「フッ……面白い顔してる。」


そう言いながら笑った顔が何だか眩しくて面白い顔だなんて言われてるのに悪い気がしないのはイケメンパワーのなせる技?


「ほら、さっきも言ったじゃん。嘘も方便。いや、この場合、傘も方便?」


「傘も方便……って、なんで嘘ついてまでこんなコンビニで買ったビニール傘が欲しいんですか?」


訳が分からないんですけど。やっぱりからかわれてる?


「君って実は天然?それとも鈍感?」


「一体、なんなんですかっ。」


さすがにこれは失礼じゃない?怒ってもいいよね?


ムカついた顔で睨みつけると


「そんなの君を口説くためのきっかけに決まってるだろ?」


「えっ?」


なんて?


「だから、前から気になってた。エレベーターで見かける度にどうやって声掛けようか悩んでた。」


「声、掛ける?私に?」


「この流れで他に誰に掛けんのよ。」


確かに……


「そうです、よねぇ……」


「梅雨が明ける前になんとかしたかったんだ。」


「梅雨が明ける前?どうして?」


「俺、梅雨生まれで結構な雨男なんだよね。だから今日みたいな日は雨が味方してくれるかなって。まぁ、ゲン担ぎみたいなもの?」


話が思わぬ方向にいって頭がついてこない。


そうこうしている内に1階のエントランスにもお昼を食べ終えた人達が帰ってきて混雑しだす。




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