鈍感な二人
数日後、ブルック家には、悲鳴が響き渡った。



ここの令嬢であるエーデルは、何事かと、その悲鳴がした方へと急いだ。




部屋に入るとそこには、何やら手紙を持ったまま震える継母ヘレンが立っていた。




「お母様?」



エーデルの呼びかけにヘレンが振り返る。その顔は歓喜に満ちていた。


「やったわ!!エーデル!!縁談よ!公爵家から縁談の申し入れよ。」


喜ぶ継母に比べてエーデルの表情は複雑だ。


「お母様、私、お見合いなんかしな」


「何を言ってるの!!アッシュベルト家よ!!あのアッシュベルト家からの縁談よ!!断るわけにいかないでしょう!!」


興奮する継母をみて、エーデルはため息をついた。こうなっては継母はこちらの言うことなど聞く耳を持たぬだろう。


「わかった。お受けするわ。」



エーデルはそうつぶやいたが、ヘレンはもうすでに話を聞いていない。メイドのアリスを読んで、見合いの席のためのドレスを新調する話に花を咲かせていた。



バカバカしい。とエーデルは思う。


だが、それを口には出さない。出したが最後、ヘレンのお説教が永遠と始まるからだ。



エーデルは母を幼いころに、そして父を数年前に亡くしていた。つまり、エーデルとこの家に関する決定権は継母のヘレンにある。


とりあえず、言うとおりにしておこう。


そう思ったエーデルは、興奮気味のヘレンとアリスを置いて部屋を出た。
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