鈍感な二人
エーデルは、継母ヘレンに連れられて、アッシュベルト家の別邸を訪れていた。もちろん見合いのために。

なぜ、別邸かというと、アッシュベルトの本邸は、ブルックの領地から離れすぎているためである。


部屋に通されると、そこにはすでにクリスフォードが座っており、そばにはアルが控えていた。



「遠い中、ようこそいらっしゃいました。このような場所ではございますが、どうぞごゆっくりおくつろぎください。」


「ありがとうございます。」


そういって、二人が席に着こうとるすると、メイドがヘレンを呼びとめた。



「ヘレン様はこちらへどうぞ。」


別の部屋に案内されて、ヘレンはエーデルを見た。


そんなヘレンにエーデルは頷いて見せた。ヘレンはなぜ自分は同席を許されないのか疑問であったが、相手は格上アッシュベルト家である。結局、大人しく従うしかなかった。



「エーデル様、こちらへ。」


アルにエスコートされ、エーデルは席に着いた。


すると、すぐにクリスフォードが口を開いた。



「エーデル・ブルック。そなたと私と取引をしないか。」


「クリス様!!」


不躾なことを言い出すクリスフォードをアルが止めようとするが、クリスフォードは止めなかった。


「アル、ちょっと黙っていろ。私は今、エーデルと話をしているのだ。」


主人にそう言われては、それ以上何も言うことはできない。アルは呆れたように口をつぐんだ。



「取引とは?」


エーデルは、クリスフォードの突拍子のない話にも驚いた様子もなく、冷静に聞き返した。


この反応に、クリスフォードも少し驚いた。


「私と、結婚して欲しいのだ。

 別に、私を愛してほしいと言っているわけではない。ただな、そこのアル曰く、私もいい加減後がないらしい。君にとっても、悪い話じゃないはずだ。うちは、君の家より、爵位が上だ。しかも、うちに嫁げば家から出ることが出来る。」


クリスフォードの言葉に、エーデルは少し首をかしげた。


「虐げられているのだろう?家で。社交場に連れて行かれず、家に閉じ込められているらしいじゃないか。しかも、家でも粗末な服を着て使用人のようなことをさせられていると聞く。」


その言葉に、エーデルは驚いた。
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