強引社長といきなり政略結婚!?
「はいはい、どの人かね」
うしろで手を組み、腰が少し曲がっている。結構いい歳かもしれない。
「石井さん、ご無沙汰しております」
「おやおや、一成くん。チャーリーとリンダには相当ご執心と見えるね。それで、患者はどこだい」
獣医の石井さんはキョロキョロと部屋の中を見渡し、ソファに足を投げ出している私に気づいた。
「そこのお嬢さん?」
「はい。よろしくお願いします」
朝比奈さんが頭を下げると、石井さんはゆっくりとした足取りで私の元へやってきた。
「いったいどうしたんじゃ?」
眼鏡の奥のつぶらな瞳が私を見下ろす。
獣医に診てもらいたくないと駄々をこねている場合じゃない。痛いのだから。
「落馬しました」
観念して答える。