強引社長といきなり政略結婚!?
こうなったら隠れているわけにはいかない。潔く体を起こして立ち上がった。
「夜分遅くに申し訳ありません!」
顔も見ずにひたすら頭を下げる。
おじい様はピタッと足を止めた。
「会長、藤沢汐里さんです」
頭を下げたまま「藤沢汐里です」と繰り返す。
「……藤沢? 例のゴルフ場か」
おじい様の声が険しくなったような気がした。どことなく不快感すら覚える。歓迎されているようには思えなかった。
「とにかく、顔を上げなさい」
そう言われて、恐る恐る頭を上げる。そこで初めておじい様の姿を見た。
思いのほか小柄で華奢。身長は私よりも低いかもしれない。細身で白髪。でも漂うオーラは、やはり普通のおじいちゃんとは違うものを感じる。目元は朝比奈さんとそっくりだ。