強引社長といきなり政略結婚!?

「寝たんじゃなかったの? 真紀さんが体調が悪そうだったって」

「そうだったんだが、なんだか妙に目が冴えてしまってね。一成と一杯やろうかと。どうかね?」

「……そうだなぁ」


朝比奈さんがチラッと私を見る。
それにどう応えたらいいのかわからず、私はひたすらソファの一部と化していた。

その時突然、鼻がムズムズとし始める。
どうしてこんな時に!
懸命にこらえるのに、私の気持ちを無視して鼻の奥がさらにむず痒くなる。
そして、ついに「クシュン」とくしゃみが私の口から飛び出してしまった。

朝比奈さんが虚を突かれたように私を見る。
顔の前で手を合わせて『ごめんなさい』と口パクで言った。


「誰かいるのか?」


おじい様が部屋の中へ入ってくる気配がする。
スリッパの音が近づいてきたのだ。


「あ、いや……」


朝比奈さんも、どうにも誤魔化せなくなったようだ。困惑気味に頭を掻いていた。

< 144 / 389 >

この作品をシェア

pagetop