強引社長といきなり政略結婚!?

赤レンガ造りで平屋の古い店構え。ダークブラウンの落ち着いた内装に、ちょっと懐かしい感じのするオレンジ色のレザーソファ。
今はやりの“カフェ”という呼称よりは、“喫茶店”のほうがしっくりくる。そこに“昭和の”と付けたら、まさにぴったりだと思わずにはいられない。

どんどん新しくなっていく街の風景の中、ここだけ時間が止まってしまったような風情だ。
それでも、そういった懐かしさを求めてやってくるお客さんは結構多く、店内が閑散としていることはまずない。

ただ、古くさいのは見た目だけ。ムード歌謡が流れそうな内装を尻目に、センスのいいジャズが控えめに流れる。その音楽を目当てに来るお客も、中にはいる。

カウンターに十席とテーブル席が五つ。今どきのカフェに比べたら小さいお店かもしれない。
でも、こじんまりとした雰囲気が、私はとても好きだ。

勤務時間は午前十一時から午後三時までの四時間。
初めての仕事、初めての接客業にもすっかり慣れたので、そろそろ勤務時間をもう少し延ばそうかと思っているところ。
四時間ほどの働きでは、家計の足しになるわけもないから。

二十八歳にもなって働くのが初めてなんて、正直ちょっと恥ずかしいのだけど。

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